卵子凍結(未受精卵凍結)保存
当院では、卵子凍結(未受精卵凍結)保存も行っております。以下を⼗分にご理解いただき、施⾏されるか慎重にご検討ください。
- 卵子凍結(未受精卵凍結)講習会の動画はこちら
- 卵子凍結(未受精卵凍結)保存の費用はこちら
- 2024年東京都卵子凍結助成事業アンケート結果
- 日本産科婦人科学会:正しく知ってほしいノンメディカルな卵子凍結
がん患者さまの卵子凍結(未受精卵凍結)には東京都から助成金があります。
卵子を凍結保存するメリット
卵子の凍結保存とは、若いうちに質の良い卵子を凍結保存しておくことです。
卵子は年齢と同じように老化し、質も低下します。しかし、出産を希望されている女性全員が、若いうちに出産できるわけではありません。将来の妊娠出産に備えて卵子を体外にて凍結保存しておくことにより、将来の妊娠に備えるということです。ですが融解した卵子の生存率は高いとはいえません。
妊娠のためには、できる限り早く妊娠プランを立てることをおすすめいたします。
卵子凍結保存についてのルール
このルールは、当クリニック独自のものです。当クリニックで卵子の凍結を実施される方には必ず守っていただきます。
ただし、日本産婦人科学会および厚生労働省の指示に従い、予告なしに変更される場合があります。
- ①採卵する年齢は、原則満40歳の誕生日までとなりますが、40歳以上の場合も担当医に相談していただくことは可能です。また、未成年の方は、ご親族の同意が必要となります。
- ②学会の推奨では、凍結卵子のお預かり(ご使用)は満45歳の誕生日までとされています。それ以上の延長保存については、妊娠年齢の安全性を考慮し50歳まで相談していただくことが可能です。
- ③採卵前に健康状態をチェックさせていただきます。
問診の結果、健康状態が採卵(将来の妊娠)に望ましくないと判断した場合、採卵をお断りすることがあります。
具体的には、- ・BMIが30以上
- ・卵巣の位置が悪く採卵が危険な場合(子宮筋腫合併または卵巣嚢腫合併など)
- ・感染症がある場合
- ・重度の肝臓、腎臓機能障害 など
- ④採卵日より1年単位での契約となります。延長の際には延長申込書および費用が必要です。
1年を過ぎても更新手続き(同意書、費用が必要です)がない場合、「延長希望なし」と判断し、破棄とさせていただきます。 - ⑤将来、凍結卵子を融解して使用する場合は精子をお預かりし、体外受精(顕微授精)での使用となります。その際には、精子提供者の体外受精実施への同意(同意書への署名)が必須となります。また精子提供者は原則として、婚姻関係または内縁の関係に限ります。
- ⑥凍結卵子をクリニック外へ持出すことは原則できません。
- ⑦凍結された卵子の保管にはセキュリティー等、最大限のケアをしています。
ただし、天災や火災、盗難等の不慮の事故による卵子の破損や損失の可能性があることをご了承ください。その際、当クリニックでは、一切の責任を負うことができません。また、一切の補償も認めておりません。
卵子凍結による将来の妊娠率
採取された卵子のうち、凍結保存することが可能な卵子は成熟卵子のみです(後述の写真参照)。また、成熟卵子でも採卵時の年齢により、受精率、妊娠率に差があります。
● 凍結卵子融解後の卵子生存の確率
(凍結卵子融解後の卵子生存の確率については複数のデータがあります。)
| ・将来、融解後の卵子生存の確率 | ・・・ | 90~95% |
| ・融解後の卵子に、精子を注入した場合の受精率(ICSI) | ・・・ | 80~85% |
● 凍結卵子を融解し、顕微授精を行った良好な質の胚盤胞1個当りの妊娠率
(年齢は卵子を凍結した時点での年齢です。)
| ・30歳以下 | ・・・ | 50%程度 |
| ・31~34歳 | ・・・ | 45%程度 |
| ・35~37歳 | ・・・ | 40%程度 |
| ・38~39歳 | ・・・ | 35%程度 |
| ・40~41歳 | ・・・ | 25%程度 |
よって、卵子の生存率とその後の着床率をふまえ、10個以上の卵子を凍結保存しておくことが望ましいということになります。
35歳の女性が、5個の卵子を保存した場合の妊娠率予測
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融解後生存率が90% 5×90%=4.5個生存 受精率(顕微授精)が80%として 4.5×80%=3.6個が受精 このうち良好胚である確率を40%とした場合 3.6×40%=1.44個が良好胚と予測 良好胚1.44個で着床率が40%(35歳)の場合 1.44×40%=57.6% |
35歳で5個の卵子を保存すると、妊娠率は約58%(流産含む)期待できますが、これは受精卵の質が良好だった場合の予測値となります。
40歳の女性が、5個の卵子を保存した場合の妊娠率予測
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融解後生存率が90% 5×90%=4.5個生存 受精率(顕微授精)が80%として 4.5×80%=3.6個が受精 このうち良好胚である確率を25%とした場合 3.6×25%=0.9個が良好胚と予測 良好胚0.72個で着床率が20%(40歳)の場合 0.9×20%=18% |
40歳で5個の卵子を保存すると、妊娠率は約18%(流産含む)期待できますが、これは受精卵の質が良好だった場合の予測値となります。
当院での未受精卵凍結使用治療成績(2023.1~2025.9)
| 卵子融解周期数 | 51周期 |
| 卵子融解総数 | 417個 |
| 卵子生存率 | 86.1%(359/417) |
| 受精率(piezo-ICSI) | 81.6%(293/359) |
| 移植数(平均年齢:35.1歳) | 19例 |
| 臨床妊娠数 | 12例(63.2%) |
排卵誘発について
排卵とは本来、月に1個ずつです。そのため、1度に複数個の卵子を採取し凍結するには排卵誘発剤の使用が必要となります。排卵誘発剤の効果には個人差が大きいこと、またホルモン値などを考慮し、最大の効果で最小限の副作用におさえるよう提案しています。
排卵誘発法を決定する要素
排卵誘発を決定する要素は、以下の3点です。
- ●年齢
- ●卵巣機能を予知するホルモン値(AMH、FSHなど)
- ●超音波所見(卵巣嚢腫の有無、antral follicle=胞状卵胞数)
排卵誘発法
準自然周期法が当クリニックの主流となっています。
具体的には、生理がはじまった後、注射を4~6回程度と内服薬の服用をはじめます。
これにより採卵数の目安が10~15個になると予測していますが、個数には個人差があります。また、採卵した卵子の中には未成熟卵子や変性卵子が含まれるため、すべてを凍結保存できるわけではありません。1度の採卵で希望個数の卵子を保存できなかった場合は、2~3ヶ月の間隔をあけて再度行うことが可能です。また完全に自然排卵で行うことも可能ですが、採卵個数は1個となるため、複数個を保存するために、複数回にわたり採卵する必要があります。
スケジュール
- ①生理がはじまったらすぐに予約をしてください。(WEB予約ができない場合はお電話を)
- ②生理2~4日目に来院し、ホルモン検査のための採血を行います。(結果が出るまで約1時間)
- ③結果を踏まえて誘発剤の種類、量などを決定します。(持ち帰り自己注射可能)
- ④予想される排卵日の数日前に来院(周期が順調な方は生理10日目頃に来院)し、ホルモン検査のための採血(結果が出るまで約1時間)と超音波検査を実施し、検査結果をふまえて、医師と採卵日を決定します。採卵日の目安は生理12~14日目です。
採卵について
採卵方法
当クリニックでは、卵子の獲得率が高く、また危険性の低い腟式採卵という方法を採用しています。これは、通常の診察で使用している経腟超音波(エコー)で確認しながら腟から卵巣に穿刺し、卵子を採取する方法です。注射をするような鈍痛がありますが、専用の非常に細い針で行いますので、卵子が5個程度であれば痛み止めの坐薬(静脈麻酔無し)で十分に採卵が可能です。希望される場合は、局所麻酔をすることも可能です。採卵にかかる時間は10分程度です。なお、採卵を担当する医師を指定することは原則できません。
静脈麻酔
採取する卵子が多い場合、採卵する卵子が少数であっても卵巣の位置が悪く強い痛みが予想される場合、または患者さまの希望(痛みに弱い方、過度の緊張など)により、静脈麻酔を用いることができます。静脈麻酔を希望される場合は、別途麻酔費用が必要です。
静脈麻酔を使用する場合の約束事
- ・医師の指定はできません。
- ・前日24時以降は、飲食できません。(当日の朝も同様です。)
- ・採卵後に車の運転はできません。
- ・帰宅はお昼ごろになります。(午後はご自宅で静かにお休みください。)
- ・安全上、当日はお化粧、人工爪、マニキュアなどは落として来院ください。
- ・丸の内院では、日曜日は施行できません。
スケジュール
- ①採卵は通常、朝8:00~10:30に行います。
採卵の前に排卵の有無の確認をします。排卵が終わってしまった場合(約5%)は中止となります。 - ②採卵します。
採取にかかる時間は個数により異なりますが、10個程度であれば15分程度です 。 - ③麻酔を使用した場合は、回復室で2~3時間程度お休みいただきます。
帰宅時間はお昼~午後となり、帰宅後は自宅で静かにお過ごしください。麻酔を使用せず採卵した場合は、20~30分程度お休みいただきます。その後お仕事に行くことも可能です。
当日必要なもの
- □「卵子凍結保存申込書」「麻酔問診票」(初回のみ)
- □費用(クレジットカードの使用可、採卵時に全額お支払い)
当クリニックでの未受精卵凍結数
| 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 新宿院 | 143件 | 235件 | 379件 | 515件 | 577件 |
| 丸の内院 | 53件 | 89件 | 167件 | 226件 | 434件 |
2023年より東京都卵子凍結助成事業開始
東京都卵子凍結助成事業アンケート結果 (2024年)
東京都が行った調査報告(卵子凍結助成で凍結が完了した方へのアンケート)を当院が簡単にまとめたものです。
採卵時の卵子について
卵子の状態は、基本的に年齢によって左右されますが、超音波やホルモン値で知ることはできません。採卵をすることにより初めて卵子の状態を知ることができるのです。以下に採取した直後の卵子を示します。卵子の状態の詳細については採卵の翌日以降に確認されます。
成熟卵子
凍結保存が可能です。35歳未満の方は、採卵した卵子の約90%は成熟卵子と予想されます。
未成熟卵子
凍結保存できません。採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子です。
変性卵子
凍結保存できません。通常、変性卵子の割合は採卵した卵子の5%以下ですが、38歳を超えると3個に1つが変性卵子となります。
成熟卵子
未成熟卵子
変性卵子凍結容器1本には、最大3個の成熟卵子を入れて保存することができます。
詳しくは「卵子の凍結保存方法」をご覧ください。
卵子の凍結保存方法
卵子の凍結保存には専用の容器を用います。1本の容器に、最大3個の卵子が収容可能です。採卵数が3個までの場合は容器1本、4~6個では2本の容器が必要となります。凍結保存には、容器1本単位で費用が発生いたしますが、初年度は同一周期に採取された4本目以降は無料(2年目からは3本目以降が無料)となります。
保存期間は、採卵日より1年単位での契約となります。延長の際には延長申込書および費用が必要です。更新予定月より1年を過ぎても更新手続き(同意書、費用)がされない場合は、「延長の意思なし」と判断し破棄させていただきます。
また可能であれば、1年ごとの更新時に卵巣年齢ホルモン(AMH)検査および超音波検査を行い、未来の妊娠の可能性について受診いただくことが望ましいでしょう。
卵子凍結のお話もされておりますので是非ご覧ください。
凍結卵子を使用する場合
- ①1度凍結された卵子を使用する場合は、必ず体外受精(ICSI)での使用となります。
そのほとんどが顕微授精です。体外受精を希望される数ヶ月前に来院いただき相談ください。 - ②体外受精を行なう(凍結卵子を使用する)際には精子が必要となり、その精子の提供者は基本的には婚姻関係、または内縁の関係であることが条件となっています。しかし、時代の流れとともに様々な規制緩和が予想されます。私たちは、厚生労働省および日本医師会、日本産婦人科学会等の指針に基づき、その時代に即した条件で使用いたします。
- ③凍結卵子を将来融解した場合の卵子生存率は、「卵子凍結による将来の妊娠率」を参照ください。
すべての卵子が変性し、受精に用いることが出来ないことも稀におこります。そのような場合でも、費用は一切返金されません。ご理解ください。 - ④融解し、体外受精にて複数個の受精卵が得られた場合、その受精卵を再度凍結保存することは技術的には可能です。しかし、②に記載した通り、当クリニックでは各種省庁や学会の指針に従って使用いたします。
- ⑤未受精卵を将来使用する場合、東京都では助成制度の対象となり、条件(保険適用と同じ条件です)を満たしていれば、2025年11月現在は最大25万円まで助成金を受け取ることができます。 詳しくは東京都HPをご確認ください。
副作⽤について
排卵誘発剤による副作用
卵巣過剰刺激症候群(腹痛、腹部膨満感)があげられます。
当クリニックでは、過度な誘発は行いません。したがって、副作用の症状である卵巣の腫れや出血は多くありません。しかし、誘発効果が予想以上である場合、卵巣が腫れることが考えられます。その場合は、数日間の自宅安静が必要です。また、入院を要するような重度の副作用が発生するケースは副作用全体の1%以下となります。
採卵による副作用
痛み、出血などが主な副作用となります。採卵は安全な手技です。基本的には何も心配する必要はありません。ご安心ください。ですが、ごく稀に経腟超音波ガイド下にて卵巣に穿刺するため、腸や膀胱等に臓器損傷を起こす可能性が報告されています。また卵巣表面からの出血、卵巣内の感染が起こる可能性があります。このような場合には数日間の安静入院が必要となる場合があります。しかし、その可能性は全体の0.3%程度とお考えください。
また、当クリニックでは現在までにこのような例は1件もありません。
「排卵誘発」「採卵」時の副作用は、排卵誘発時に使用した注射の効果が予想を上回り、採卵数が10個を超えるケースで起こりやすいとされています。
体外受精のスケジュール

体外受精の歴史
1978年に世界初の体外受精をエドワード博士(イギリス)が成功させ、体外受精児が誕生してから45年余りが経過しました。その誕生児(ルイーズ・ブラウンさん)もすでに結婚し自然妊娠、出産もされています。この功績が認められ2010年、博士はノーベル生理学医学賞を受賞することとなります。この間に日本でも60万人以上の赤ちゃんが体外受精により誕生しました。 また、顕微授精(後述)をした児の誕生からも30年以上が経過しています。
現在、日本では体外受精が不妊治療の中心となっており、年間約55万周期の治療が実施されています。その結果、2023年には体外受精によって誕生した赤ちゃんが85,000人を超え、出生児全体の約12%、すなわち8.5人に1人が体外受精による妊娠・出産となっています。







