排卵誘発法について
体外受精で採卵を行う際には、発育する卵胞を増やすことが一般的に行われ、これを卵巣刺激といいます。複数の良好な受精卵が得られれば、余剰胚を凍結し、次周期以降の治療のために保存できるという大きなメリットがあります。誘発法は体外受精の成功を左右する重要な要素であり、患者おひとりおひとりの状態に合わせて十分に相談しながら、最適な排卵誘発法を提案しています。当クリニックでは、これまでに10万例を超える体外受精を行っており(丸の内院:3万例以上、世田谷院・新宿院:7万例以上)、豊富な経験と実績に基づき、安全かつ確実な治療を提供しています。
排卵誘発法を決定する要素
- ●卵巣機能を予知するホルモン値
(AMH、FSHなど) - ●超音波所見
(卵巣嚢腫の有無、antral follicle=胞状卵胞数) - ●年齢
- ●患者さま本人の過去の治療実績など
誘発法は次の通りです。
自然周期法
排卵誘発剤をほとんど使用しないこの方法は、採取できる卵子の数は1個に限られます。卵巣への負担はないものの、採取できる卵子が1個のみのため、余剰胚を作ることはできません。AMHが保たれ、複数の卵子が期待できる場合には、妊娠率の観点からこの方法は適していません。
自然周期法が向いている方は?
- ●排卵誘発を望まない場合
- ●誘発剤を使用しても1つしか育たないと予想される場合(卵巣機能が弱い方)
- ●過去に複数個採卵しても、受精卵の質が悪かった場合 など
スケジュール
- 排卵日予想の数日前に来院(周期が順調な方は生理12日目頃に来院)し、ホルモン検査のための採血(結果が出るまで約1時間)と超音波検査を行います。
- 検査結果をふまえて、医師と採卵日を決定します。平均的な採卵日は生理14~16日目です。
完全自然周期法成績:2020
当クリニックにおいて、2020年に完全自然周期法を、約420周期実施いたしました。
- ・平均年齢35.4歳
- ・実施完了した数、322周期(約76%)
- ・当日排卵済で中止した数、72周期(約17%)
- ・実施したが卵子が空胞であった数、26周期(約7%)
年齢 | 移植周期数 | 生化学的妊娠 | 臨床妊娠 | 流産率 |
---|---|---|---|---|
35歳以下 | 224例 | 111例 (45.5%) |
93例 (38.1%) |
11.8% |
準自然周期法
準自然周期法は中刺激に相当し、当クリニックでは初回採卵の主流となっています。排卵誘発剤の効果には個人差がありますが、内服に加えて3~4回程度の注射を行った場合、採卵できる卵子の数の平均は7~10個となります。卵巣への負担は軽度ですが、連続周期で採卵採卵することはできません。隔月での採卵が可能です。
準自然周期法が向いている方は?
- ●新鮮胚移植を希望する場合(移植か全胚凍結かは刺激開始前に医師との相談が必要)
- ●複数個の受精卵を望む方で、医師が誘発剤の使用が有効であると判断した場合
- ●余剰胚を期待する場合
スケジュール
- 生理がはじまったらすぐに予約をしてください。
- 生理2~4日目に来院し、ホルモン検査のための採血(結果が出るまで約1時間)を行います。結果をふまえて誘発剤の種類、量などを決定します。(持ち帰り自己注射可能)
- 予想される排卵日の数日前に来院(周期が順調な方は生理10日目頃に来院)し、ホルモン検査のための採血(結果が出るまで約1時間)と超音波検査を実施し、検査結果をふまえて、医師と採卵日を決定します。
- 医師と決定した採卵日に来院。採卵日の目安は生理12~13日目です。
AMHなどが良好な場合は、準自然周期法でも注射回数を増やし10個以上の卵子を採取できるように計画することも可能です。
その他の誘発法(高刺激法)
Long法、Short法、Antagonist法、PPOS法などがあり、排卵誘発剤を最大限使用してできるだけ多くの卵子を採取する方法を高刺激法といいます。7~10回の注射を連日行い、10~30個程度の卵子を採取し、胚盤胞として凍結保存します。一度に多くの凍結胚を保存できることがメリットです。高刺激法の詳細については、担当医にお尋ねください。
高刺激法で考えられるリスク
- ●卵巣過剰刺激症候群(略:OHSS、主な症状は過度の腹満感、腹痛、浮腫など)
- ●OHSSが発症した場合の治療薬は保険が適用される範囲が限られている。(OHSSは、採卵後2〜7日がピークとなります。)