特殊検査や治療について
以下の検査は、患者さまの希望により実施する着床不全および不育症に関する特殊検査です。血液検査については生理周期に関わらずどの時期でも検査が可能ですが、特殊検査のため平日の午前のみとなります。ご予約のうえ来院ください。
着床不全とは、体外受精・胚移植において、良好な胚を3回以上移植しているにも関わらず、一度も妊娠反応を得ない場合を対象と考えます。
不育症は、過去の妊娠で3回以上続けて流産を経験されている場合が対象となります。流産は妊娠の約15~20%に起こるものですので2回の流産はあまり心配する必要はありませんが、希望があれば3回未満の流産でも検査を行うことは可能です。
子宮鏡検査
子宮鏡検査とは、子宮の中に細いカメラをいれて子宮の内部を直接観察するものです。イメージ的には胃カメラと同じです。超音波検査や子宮卵管造影検査などで、子宮内部の筋腫やポリープが疑われる場合や原因不明不妊の場合などに行います。生理が始まりましたらすぐに予約してください。検査ができるタイミングは生理終了直後から排卵前までです。
先進医療 子宮内膜炎検査
体外受精反復不成功の原因のひとつに、近年「子宮内膜炎」が指摘されています。子宮鏡で子宮内を観察することで、ある程度の内膜炎予知が可能です。内膜炎が疑われた場合、後日確定診断としてCD138免疫染色検査(内膜炎検査)、子宮内細菌検査(EMMA/ALICE、子宮内フローラ)を行う場合があります。胚移植を2回以上実施しても着床しない場合には、必ずお受けください。現在、CD138免疫染色検査(内膜炎検査)は保険が適用されませんが、EMMA/ALICE/子宮内フローラなどについては先進医療と認定されているため、混合治療が可能です。
着床不全および不育症セット検査
当クリニックオリジナルの血液検査となります。凝固系異常や自己免疫性疾患などを検索し、着床不全や不育症の原因を探ります。この検査では、抗リン脂質抗体や自分を傷つける抗体反応、血液が固まりやすくなる要因についても調べます。また、以下の項目に異常があれば、抗凝固療法(低用量アスピリン内服・ヘパリン自己注射)や漢方内服などの治療を行います。検査結果には約1週間要します。
- ●抗核抗体
- ●LA-DRVVT
- ●APTT
- ●抗CL 抗体 IgG
- ●抗CL 抗体 IgM
- ●プロテインSおよびC活性
- ●第12因子
- ●抗CLβ2GPI 抗体
- ●Th1 細胞/ Th2 細胞
夫婦染色体検査
血液検査です。本人のみ、またはご夫婦で検査することも可能です。結果に対し治療法はありませんが、特に不育などの原因検索には重要な検査となります。
難治性着床不全症PRP(Platelet Rich Plasma=多血小板血漿)療法
多血小板血漿(platelet-rich plasma:PRP)を使った不妊治療とは、患者さま自身の血液から抽出した高濃度の血小板を子宮内に注入し、子宮内膜を活性化し着床効果を期待する方法です。血小板は細胞の成長をうながす物質や免疫にかかわる物質を含むため、このPRP療法により子宮内膜が活性化され、そのことにより受精卵が着床しやすくなる可能性が高くなると考えられています。
治療効果の継続期間は未だはっきりと解明されていませんが、現時点で約2周期程度の効果があると推測しています。
【スケジュール】
- 生理2〜4日目に「治療同意書」を持参し来院ください。(ホルモン補充融解胚移植としてweb予約が可能です。)
- 1回目と2回目の投与日時を決定します。(1回のみの投与も可能)
- 1回目の注入は生理10日目前後(8〜11日目)、2回目の注入は生理12日目前後(11〜14日目)になりますが、1回目と連日投与はできません。
- その後、融解胚移植または人工授精施行となりますが、内膜が極端に薄い、出血などの事情で中止になった場合でも、返金はできませんのご注意ください。
PRP療法は先進医療ではありません。保険診療で移植する場合は実施できません。
保険診療のためのPOINT
低用量アスピリン療法の適応について
胚移植は保険診療が可能となりましたが、アスピリン(小児用バファリン)は保険適用外です。そのため、保険診療での周期では処方できません。なお、胚移植を自費周期で行う場合は処方できますが、保険診療で採卵した受精卵を自費診療で移植することはできません。
その他、事前にお伝えしておきたいこと
感染症検査について
当院で不妊治療を行う患者さま全員に、1年に1回の感染症検査を受けていただいております。他院で行った検査結果をお持ちいただければ1年以内は有効です。血液型は当クリニックで再度検査いたします。
- ●血液型
- ●貧血
- ●B型肝炎
- ●C型肝炎
- ●梅毒
- ●HIV
- ●AMH(卵巣年齢を予想するホルモン)
着床前検査(PGT-A)について
受精卵着床前検査については、事前に担当医までお尋ねください。
受精卵や精子のお預かりについて
凍結後の受精卵(胚)は、当クリニック培養室の24時間監視カメラ下にて厳重に保管します。 保管室の施錠、取り間違い防止のためのダブルチェックを行い、凍結専用容器にはご本人による署名、受精卵数・凍結日の記入を行うなど最大限のケアに努めております。また、この内容は専用の管理ファイルやカルテにも記載されます。ただし、天災や火災、盗難等の不慮の事故による破損や損失の可能性があります。その際、当クリニックでは一切の責任を負うことができません。また、一切の補償も認めておりません。なお、凍結保存については毎年更新の手続きをお願いしており、1年後に更新手続きがない場合には「更新の意志なし」と判断し、自動的に廃棄させていただきます。以上について事前にご理解、ご了承くださいますようお願い申し上げます。 受精卵の凍結延長は原則自費(妊娠後の延長や自己都合の場合)となります。ただし、医師より妊娠の延期を指示された場合は、保険適用で延長できる場合があります。
薬などの適応外使用について
当クリニックの不妊治療は、国内では不妊治療への使用が認められていない薬などを使う場合があります。これを適応外使用といいます。これは国内でも不妊治療以外での使用は認められており、海外では広く不妊治療に用いられ安全性も認められているものです。使用についての心配は必要ありませんが、不妊治療に使用する場合は自費診療となります。適応外使用を行う場合は事前に担当医より説明いたしますが、使用を望まない場合はいつでもお申し出ください。
保険診療で体外受精を行う場合、薬剤の適応外使用は一切できません。
学会への報告義務・学会発表・個人情報について
杉山産婦人科は日本産科婦人科学会の生殖補助医療実施登録施設であり、当クリニックで行った体外受精などの成績は学会への報告義務があります。また、症例の報告や検査結果などのデータを使用した研究を国内外の学会や論文で発表することがございます。そのため、破棄される検査後の血液や精液を研究などに使用させていただくことがあります。個人を特定することは一切ありませんのでご安心くださいませ(個人情報保護)。また、データの使用を望まない場合には事前にお申し出ください。ご理解のうえ、ご協力くださいますようお願い申し上げます。
保険適用となる診療について
① 対象者(年齢制限)について
患者さまの年齢が治療の開始日に43歳未満である場合が対象です。
治療中に43歳の誕生日をむかえた場合でも保険は継続して適用されます。下記に記載する回数制限に満たない場合でも、患者さまの年齢が43歳以上で治療を開始した治療は保険適用対象外です。
治療開始日とは、その周期にはじめて来院された日(通常は生理2~4日目頃)をいい、生殖補助医療管理料を算定した日となります。
② 診療回数制限について
保険診療は、初めて診療を行った年齢(43歳以降は対象外)で治療回数の制限が設定されています。
| 年齢 | 保険適用される回数 |
|---|---|
| 40歳未満 | 移植回数6回まで保険適用 |
| 40歳〜42歳 | 移植回数3回まで保険適用 |
| 43歳以上 | 保険適用なし |
③ その他条件
保険診療を受けるには、婚姻関係または事実婚であることが条件です。事実婚とは同一世帯であり、事実婚者に配偶者がなく、出生後児を認知する誓約があることをいいます。また、保険診療を希望するおふたりが、日本の健康保険に加入されており、健康保険証をお持ちの場合に限ります。
また、人工授精や体外受精を保険診療で受ける場合は、最低でも6ヶ月に1度は配偶者または事実婚者との来院が必要です。
その他
体外受精に関してよくお寄せいただくご質問や費用については下記をご覧ください。







