採卵について
採卵方法
当クリニックでは、卵子の獲得率が高く、また危険性の低い腟式採卵という方法を採用しています。これは、通常の診察で使用している経腟超音波(エコー)で確認しながら腟から卵巣に穿刺し、卵子を採取する方法です。注射をするような鈍痛がありますが、専用の非常に細い針で行いますので、卵子が5個程度であれば痛み止めの坐薬(静脈麻酔無し)で十分に採卵が可能です。希望される場合は、局所麻酔をすることも可能です。採卵にかかる時間は10分程度です。なお、採卵を担当する医師を指定することは原則できません。
静脈麻酔
採取する卵子が多い場合、採卵する卵子が少数であっても卵巣の位置が悪く強い痛みが予想される場合、または患者さまの希望(痛みに弱い方、過度の緊張など)により、静脈麻酔を用いることができます。(静脈麻酔を希望される場合は、別途麻酔費用が必要です)
静脈麻酔を使用する場合の約束事
- ・医師の指定はできません。
- ・前日24時以降は、飲食できません。(当日の朝も同様です。)
- ・採卵後に車の運転はできません。
- ・帰宅はお昼ごろになります。(午後はご自宅で安静にお休みください。)
- ・安全上、当日はお化粧、人工爪、マニキュアなどは落として来院ください。
- ・丸の内院では、日曜日は施行できません。
スケジュール
- 採卵は通常、朝8:00~10:30に行います。
採卵の前に排卵の有無の確認をします。排卵が終わってしまった場合(約5%)は中止となります。 - 採卵します。採取にかかる時間は個数により異なりますが、5個~7個程度であれば、10分程度です 。
- 麻酔を使用した場合は、回復室で2~3時間程度お休みいただきます。帰宅時間はお昼~午後となり、帰宅後は自宅で静かにお過ごしください。麻酔を使用せず採卵した場合は、20~30分程度お休みいただきます。その後お仕事に行くことも可能です。
- 帰宅前に、卵子の状態、精子の状態を説明し顕微授精の必要性などを相談させていただきます。このときに、移植の日時や凍結希望日などを決定します。
当日必要なもの
- □精子
精子は2時間以内に採取したものをお持ちください。院内で採取することも可能です(部屋の予約が別途必要となります)。
事前に精子を凍結保存しておくことも可能ですが、凍結精子の場合は、顕微授精になります。 - □「体外受精申込書」「顕微授精申込書」(初回のみ)
- □「移植同意書」(1年毎に必要)
- □費用(クレジットカード可、採卵時のお支払いは移植代を除く全額となります)
採卵時の卵子について
卵子の状態は、基本的に年齢に左右されますが超音波やホルモン値で知ることはできません。採卵をすることにより初めて卵子の状態を知ることができるのです。以下に採取した直後の卵子を示します。卵子の状態の詳細については採卵の翌日以降に確認されます。
成熟卵子
受精に使用可能です。35歳未満の方は、採卵した卵子の約90%は成熟卵子です。
未成熟卵子
採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子で、その状態により使用できる場合と、使用できない場合があります。
変性卵子
受精には使用できません。通常、変性卵子の割合は採卵した卵子の5%以下ですが、40歳を超えると3つに1つが変性卵子となります。



【未成熟卵子の取扱について】
未成熟卵子については、採卵後数時間は体外でも培養を試み、成熟卵子になれば予定通り使用いたします。ですが、数時間の培養では成熟卵子に達しず、体外培養を翌日まで続けた結果、その卵子が成熟したとしても妊娠率が極めて低いため、当クリニックでは原則として翌日までの培養は行いません。しかしながら、採卵した卵子全てが未成熟卵子だった場合は、体外培養を翌日まで続け成熟が確認された場合にのみ担当医の判断で顕微授精を行い、受精を試みることがあります。(追加培養については、希望される意思があるかを事前に伺います。)
精子調整法
精子は採卵日当日に必ずお持ちください。
事前に良好な状態で精子を凍結した場合、当日分は不要です。また、当日精子を用意できない場合は、凍結精子を利用します。凍結精子は新鮮な精子と比べて受精率が低いため、凍結精子を使用する場合には、顕微授精となります。採精前の数日間(2日~7日が目安)は禁欲してください。
先進医療:マイクロ流体技術を用いた精子選別の導入
精子の頭部には遺伝情報であるDNAが含まれています。最近の研究で、精子DNAの損傷率が高くなると、精子の質が低下していることになり、自然妊娠や人工授精による妊娠の可能性が低くなることが判明しています。
また体外受精・顕微授精においても、精子の質が低下すると受精率や良い胚盤胞になる割合、妊娠予後がわるくなる原因になります。精子DNA損傷は、精子DNA断片化指数:DFIで評価でき、ZyMōtを使用すると、DFIは13.4%から0.4%まで低下しており、損傷精子の割合が極めて低い状態となることが期待されています。
詳しくは、先進医療:マイクロ流体技術を用いた精子選別 をご確認ください。
受精卵の培養
採取された卵子のうち成熟卵子のみが受精する能力を有しています。(「採卵時の卵子について」参照)
これらの卵子と調整された精子を、特殊な培養液と特別な環境下で培養を行います。(後述の「培養最新機器Geriタイムラプスインキュベーター」を参照)
翌日、受精の有無を観察しますが、下記のように卵子中央に核が2つ確認できると正常受精といえます。核が見えない場合は受精しなかったと判断します。 また、場合により核数に異常(複数受精)が見られることがあり、これは異常受精としてその後の培養を中止します。
成熟卵子と良好精子の場合には、通常、顕微授精は行わず自然受精(媒精)を試みますが、 受精する確率は約70%です。何も異常がない場合でも約30%は受精しないことになります。また35歳以降は年齢とともに受精率はさらに低くなります。
一方で精子が良好な場合でも、貴重卵であることなどの理由から希望される場合は、顕微授精(「顕微授精法(従来法ICSIと新法Piezo-ICSI)」参照)を行う場合があります。その場合、受精する確率は約85%と上昇傾向にあります。顕微授精実施の有無については採卵当日の精子の状態を見て担当医が決定します。


培養最新機器Geriタイムラプスインキュベーターの導入
Geriタイムラプスインキュベーターとは、常に胚を観察できることで、受精の状態を正確に判断できる培養最新機器です。 また培養器の開閉を最小限に抑えられることより、温度やPH濃度を安定して維持することが可能となり、最適な培養環境が提供できます。
この機材の最大の特徴は、従来のタイムラプス培養器では不可能だった加湿培養が可能となり、より良好な培養成績を得ることができると予想されることです。 当クリニックでは世界最高クラスの培養機器を丸の内院・新宿院合わせて28台導入し、全ての培養は当機器を使って行います。

